私は旅が好き。航空券とパスポート、それに時刻表とガイドブックを持って独り旅に出る。後はすべて現地調達で心の赴くままに旅をしたい。
だから前もって旅程表 を作成していてもあまり役に立たない。心に響くものがあれば是非ともそこを訪ねてみたい・・・見て、聞いて、話して、触れて、味わって、その土地
の匂いを自分の五感を通して知ることの意義は大きい。
普段思いっきり鈍ってしまっている足腰も、
旅の空の下では不思議なほど貪欲に体が動いてしまうのもこの故だろうか。 いろんな国や地域を旅してきた後、日本に戻って思うことがある。過度の物質的豊かさを甘受できない小市民の私だからそう感じるのだろうか。「文明の利器」のお陰で手間と時間を 矮小化した便利な生活に慣れきってしまった現代人の日常からは、さりげない日々の生活を通して培う感性の豊かさや情緒が物質的豊かさに反比例 しながら加速度的に 希薄になっていっている気がしてならない。 情緒的豊かさと物質的豊かさは相反するものなのだろうか。 かの国の質素で素朴、それでいて何とも心根の優しい人々を見ていて、彼らもいつの日か「文明の利器」に心を奪われて情緒を失いながら物質文化に邁進して行くのだろうか。 そうなる前にこのかけがえのない大切な地球の遺産、森羅万象の中で営々と守られてきた大地と人との繋がりをこの眼で出来る限り見ておきたい。 ・・・・・だから私はこれからも旅を続ける。( 1996.9.15 記) |
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